事前確認制度は英語表記にするとAdvance Pricing Agreementとなり、その頭文字をとってAPAとも表記されます。
国外関連取引を行っている法人が、税務署長または国税局長に対して確認を申し出る制度。確認してもらうのは、国外関連取引の価格が適正かどうかの指標ともなる独立企業間価格について、法人が算定方法及びその具体的内容となります。税務署長または国税局長は、その内容がより合理的と考えられれば「確認」をするというわけです。
ここでいう「確認」とは、税務当局が移転価格税制において「確認した」という公的解釈の表明とされるもの。移転価格について、確定申告書を提出した後に調査が入るかどうかを待つのではなく、法人側から事前に確認を依頼する、ある意味で攻めの移転価格リスク対策ともいえます。
国外関連取引の価格が適正であることを示すため、個々の取引において独立企業間価格を算定するのは事前にしろ確定申告書提出後にしろ、行わなければならない作業。事前確認制度を利用した方が、次に説明する企業側メリットもありますし、自社側の方針に沿った算定方法を使って申請できる点でも、制度を利用する必要性が高いといえます。
事前確認制度(APA)とは、納税する企業が税務当局へ申し出ることで、国外関連取引の独立企業間価格の算定方法などを税務署が確認してくれる制度です。
バイラテラルAPAとは、国内の税務当局と関連会社のある国の税務当局が相互協議を行って、独立企業間価格について合意にもとづいた事前確認を行ってもらうための手続きです。双方の国の税務当局による合意が得られるので、対象となる企業が二重課税といったリスクを回避できることがポイントです。
ただし、相互協議を開催するために時間や費用がかかる上、申請手続きも煩雑になることはデメリットでしょう。加えて、対象はお互いに租税条約を締結している二国間取引に限られることも重要なポイントです。
なお、バイラテラルAPAによって相手国との合意が得られる保証はありません。
ユニラテラルAPAは、二国間取引において対象国となる国のうち、どちらか一方の国(自国)の税務当局に対して事前確認を申し出る制度です。バイラテラルAPAのように両国の当局間で調整する必要がなく、合意を得られるまでの時間が短縮されコストを抑えられるといったメリットがあります。ただしあくまでも一方の国における同意しか得られていないため、もう一方の国から移転価格税制にともなって課税される可能性は無視できません。
とはいえユニラテラルAPAで採用された独立企業間価格が合理性を持っていれば、相手国の国税当局に認められる期待はあります。
事前確認を申し出て受けることにより、移転価格税制のリスクを回避して、予測可能性の確保についても前向きなメリットを得られることは事実です。しかし、申し出のためにはコストや労力がかかるため、全体的にプラスになるかマイナスになるか素人が判断することは難しいにも事実です。
そのため、税務当局に事前確認を申し出るべきか否か、移転価格税制に関するコンサルティングを行っている税理士事務所や会計事務所に確認することも有効といえます。
理想をいえば、バイラテラルAPAによって関係国の税務当局の双方が相互協議による合意を得て、適切な独立企業間価格の算定方法についても確認できていることが望ましいでしょう。しかし、バイラテラルAPAは両国の税務当局が連携しなければならない上、そもそも租税条約を締結している国同士しか実行できないことも事実です。
ユニラテラルAPAは一方の国においてしか確認ができていないものの、その結果が適正かつ合理的であれば相手国にも認められる可能性があり、結果的にユニラテラルAPAで十分と考えることもできます。
とはいえ素人判断に任せることはリスキーであり、移転価格税制の専門家へ相談することが無難です。
事前確認の申出書の提出期限は、確認対象事業年度の範囲において、最初の事業年度(確認対象初年度)が開始する日までとなっています。
ただし、申出書へ添付すべき資料の一部に関して、相当の理由があって申出期限までに提出できなかったと認められた場合に限り、資料提出に要する通常の日数を勘案し、45日を超えない範囲内で提出期限を再設定して資料提出の期限に猶予を設けられることもポイントです。
参照元:国税庁「よくあるご質問とその回答」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/itenkakakuzeisei/04.htm)
事前確認に要する期間は、そもそもバイラテラルAPAかユニラテラルAPAかによって大きく変わります。また、新規申出か更新申出か、あるいは内容の詳細や提出されている資料が十分か否かといった条件によっても期間が変わることに注意してください。
なお、国税庁の公式ホームページでは、事前確認の期間について1件あたりおよそ2年程度の処理期間が平均的であると解説されています。
参照元:国税庁「よくあるご質問とその回答」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sodan/kobetsu/itenkakakuzeisei/04.htm)
事前確認の前に国税局の窓口で「事前相談」を行い、必要な書類の内容や申請方法について確認しておくことが大切です。また、事前相談を行ってから事前確認の申出を行うと、事前相談を行っていない場合よりも比較的スムーズに審査が行われるとされています。
事前確認の申出書「独立企業間価格の算定方法等の確認に関する申出書」は、確認対象初年度の開始日までに必要書類を添付して提出します。
国税局において審査担当官が提出された申請書や添付されている資料の確認を行い、事前確認の審査を行います。なお、事前確認の審査では申出を行った企業に対して、国税局から追加資料や追加書類の提出を求められるケースも少なくありません。
審査が無事に終了すれば、事前確認の申出を行った企業へ審査結果が通知されます。
申出を受理した国税局において事前確認の審査が完了し、内容について合意を得られれば、改めて国税庁が相手国の税務当局に対して相互協議の調整を行います。
具体的には両国の税務当局がスケジュール調整を行い、さらに協議の際にはそれぞれの国が自国の意向に則って事前確認の合意案を提示するという流れです。その上で協議が行われ合意に至れば、事実上バイラテラルAPAが成立します。
注意すべきは、事前確認の相互協議によって得られた合意の内容が、必ずしも申請者からの申出内容と等しいとは限らないという点です。もしも相互協議において合意された内容と、申出書の内容に差違がある場合、適正な修正申出書を提出して内容のリチェックをしなければなりません。
その後、国税当局から確認通知が届けばAPA取得となり、企業は定められている期限までに年次報告書を提出することになります。
事前確認制度によって申し出をして確認された場合、その独立企業間価格算定方法に沿って申告すれば、税務当局は移転価格課税をしません。事前作業は増えるものの、こうした準備をすることで、予測が難しいとされる移転価格の問題を回避できる可能性が高まります。
また、これは税務に関する面だけでなく、国外関連取引に携わる様々な部署・スタッフにとっても、余計な心配をせずに取引業務を推進できるというメリットもあります。
事前確認制度に申し出をするにあたって、専門コンサルに相談した場合、どういった流れになるのか、 KPMG税理士法人とデロイトトーマツを例として説明します。
参照元:KPMG税理士法人公式HP(https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/pdf/2016/03/jp-advance-pricing-agreements.pdf)
参照元:デロイトトーマツ税理士法人公式HP(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/tax/solutions/tp/apa.html)
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