このページでは、移転価格分析や移転価格文書化において重要な「比較対象企業」の選定ポイントや、比較対象企業を選定すべき理由などについて分かりやすく解説しています。移転価格税制を理解するための参考としてご活用ください。
移転価格税制にもとづいた親子間取引の合理性や正当性を検証する上で、取引内容や事業規模など様々な条件において類似性を持っている「比較対象企業」を参考にして、その親子間取引の利益水準が他の同類の取引と比較して適正かどうかを判断する過程が重要となります。
この際、データの参考として用いられるのが「比較対象企業」であり、比較対象企業を適切かつ合理的に選定するからこそ、移転価格文書化や移転価格分析といった作業も正確に行えます。
一方、比較対象企業はあらかじめ特定の企業が指定されているわけでなく、あくまでも自社の取引に応じて決定しなければならないため、きちんとした選定方法を理解しておくことが欠かせません。
比較対象企業を選定する際、様々な企業のデータが収録されている企業データベースを活用して、公開されている情報を参考にしながら対象となる比較対象企業の候補をスクリーニングします。
絞り込み作業の方法も多角的なアプローチが存在しており、どういった観点からスクリーニングを実施して対象企業を選定するかで結果が変わることも重要です。
比較対象企業の候補をスクリーニングする前に、まず企業データベースを参照して公開情報をチェックしなければなりません。
どのようなデータベースを活用するかによっても選定結果の信頼性が左右されるため、原則として世界各国の企業の財務情報が正確かつ網羅的にまとめられている有料企業データベースを活用することが一般的です。
なお、有価証券報告書などの公開資料をピックアップして自社で各社の財務状況などを把握することも可能ですが、実際には作業規模が膨大になるため現実的ではないでしょう。
有料企業データベースを活用する場合、国や地域、産業分類、上場企業/日乗除企業の選択などニーズに合わせたデータ抽出条件を決定して対象候補をピックアップします。
ある程度の候補を抽出できれば、改めて定量基準によるスクリーニング(定量分析)を実施します。
定量分析では、まず参考にすべき同等のデータ傾向について定量基準を設け、それにマッチしない企業を候補から除外していくという流れが特徴です。
定量基準の例としては、以下のようなものが考えられます。
このような条件付けを行って候補を一層に絞り込んでいくことで、比較対象企業の信頼性を高めていくことが可能です。
定量分析によって比較対象企業の候補の絞り込みが進めば、次に定性基準によるスクリーニング(定性分析)へと移ります。
定性分析とは、自社との類似性やマーケットの同一性、事業関連性やリスクの可能性など、定性的な情報にもとづいて絞り込みを行う作業を指します。
基本的に、あらゆる条件において全く同一の企業はこの世に存在しないものの、定性分析の条件を甘くすると比較対象企業の選定が完了しないため、適切なバランスを見極めて定性基準を設定することがポイントです。
そのため、定性分析はスクリーニングや選定を行う人間の知識や経験、感性などに左右されることも理解しておきましょう。また、後に選定理由をしっかりと説明できるように、どのような基準を設けたのかエビデンスを残しておくことも大切です。
移転価格税制の適用を考える上で、比較対象企業の情報を参照にしながら移転価格文書や移転価格分析といった項目を検討することは極めて重要です。そのため、比較対象企業を適切に選定することがそもそも必須の条件となってきますが、一方で特に定性分析のような過程には選定者の感性や主観が影響しやすいことも無視できません。
定量分析であれば具体的な数値を根拠にできますが、定性分析ではある程度の感覚的な分類が必要になってくるため、改めて他者へ合理的に説明できるよう資料や参照データを用意しておくようにしてください。
なお、正確な比較対象企業の選定をいきなり初心者が実行することは現実的でなく、移転価格対応の内製化をサポートしてくれる専門会社へ相談することも無難です。
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